
AIを活用した転職エージェントとの向き合い方
前回の記事では、エージェント側の視点からAI時代における転職支援の介在価値について書きました。
今回は視点を変えて、転職を検討されている候補者様・求職者様に向けて、AIをどのように転職活動に活かすかについてお話しします。
面談前にやっておくといいこと

冒頭から結論をお伝えすると、転職エージェントとの面談前に、以下をやっておくと面談の質が大きく変わります。
- 事前準備
- AIを壁打ち相手として、キャリアの棚卸しや方向性の整理を事前に行っておく
- 興味のある求人や業界についてAIに調べてもらい、ある程度の情報を持った状態で臨む
- 相談予定の人材紹介会社や担当コンサルタントのバックグラウンドをAIで調べ、強みや専門領域を理解しておく
- その上で、面談で聞きたいこと・相談したいことを事前に整理しておく
これだけで、面談の密度は大きく変わります。
事前準備が面談の質を変える理由
転職エージェントとの面談は、多くの場合60分程度です。その限られた時間の中で、自分のキャリアを一から説明し、希望を伝え、求人提案を受けるとなると、どうしても話の流れに乗りやすくなります。
自分の中で考えや優先順位が整理されていないまま面談に臨むと、その場の雰囲気や提案に流されやすくなります。応募するつもりのなかった求人への意思表示を求められたり、十分に考える時間が取れないまま次のステップへ進んでしまうケースもあります。一部の転職エージェントにおいては、「出すだけ出してみませんか?」と応募を前提に話が進むこともあるため、候補者様ご自身の判断軸を持っておくことは大切です。もし提案を受けて迷った場合は、踏み留まって「検討させてください。」と伝えるのも良いと思います。
事前にAIで自分の考えを整理しておくことで、
- コンサルタントの提案や助言の具体性が増す(こちらの状況を深く共有できるため)
- AIが示した方向性とコンサルタントの見立てが一致したとき、納得感が高まる
- 自分の軸がある状態で臨めるため、不要な提案に流されにくくなる
転職経験の有無に関わらず、AIはセカンドオピニオンになる
転職が初めての方は特に、転職エージェントという存在に対して、どこまで信頼してよいか、どのように付き合えばよいかが分からないという方も多いと思います。
そういった方こそ、AIを事前の相談相手として活用することをお勧めします。AIに自分の経歴や希望を入力し、方向性を整理した上でエージェントに相談することで、「言われるがまま」になりにくくなります。
一方、転職経験が豊富な方にとっても、AIはセカンドオピニオンとして有効です。エージェントとのやり取りの内容をAIに読み込ませ、「この提案は自分にとってどうか」「他にどんな選択肢が考えられるか」と問いかけることで、より多角的な視点を持つことができます。
転職エージェントに求められること

少し立場を変えて、転職エージェント側の話もさせてください。
候補者様がAIを積極的に活用されることで、「この点はAIにも聞いてみたのですが」という会話が増えてくると思います。それは私たちエージェントにとって、正直なところ、身が引き締まる話でもあります。
AIが提供できる情報やアドバイスの水準は、年々高くなっています。そのような時代に転職エージェントとして価値を出すためには、
- 候補者様の言葉の背景にある想いや価値観を引き出す対話力
- 短期的な転職成功だけでなく、中長期的なキャリアを見据えた視点
- 各選択肢のメリット・デメリットを公平に伝える誠実さ
- 公開情報では得られない、企業の内情や採用背景に関する一次情報
- 担当者レベルで築いてきた、企業との信頼関係とコネクション
- スピードとクオリティを両立した、実務サポートの対応力
これらが、これまで以上に問われると感じています。私自身もその基準で仕事に向き合っていきたいと思っています。
AIと転職エージェント、両方をうまく使ってください
AIは非常に便利な存在ですが、企業の最新情報を獲得できていないこともあり、特に組織・人事の情報は非開示のことも多く、常に変化が伴うもののため、このあたりは関係性の強いエージェントに頼る部分が大いにあると思います。
また、事細かな相談、交渉事も転職活動時には多くあり、一般的な相談までは出来ても、個々の企業毎の相談、交渉に際しては、人間の転職エージェントにしかできないことも現時点ではかなりあると思います。
AIで自分の考えを整理し、エージェントとの面談でその考えをぶつけ、さらに得られた情報をAIで整理する——そうした循環の中で、転職活動の質は高まっていくと思います。また納得感も得られると思います。
転職活動は、人生の大きな意思決定のひとつです。使えるものは全て使いながら、納得のいく選択、意思決定をしていただければと思います。


