人材業界の概要、市場規模、ビジネスモデルについて
(求人広告、人材紹介、HRTechなど)
業界内で使われている言葉として多いのが、「人材業界」と「人材ビジネス」、そして、HR(ヒューマンリソース)とテクノロジーを掛け合わせた用語である、「HRTech」の3つがございます。
尚、上記で記載をしました「人材ビジネス」ですが、こちらは法律用語ではなく、
「労働者の募集・採用、教育訓練、転職に関わる事業や業態を指す。」
とされ、「人材業界」も概ね同義で用いられております。
尚、業界区分では、人材紹介(職業紹介事業)、人材派遣(労働者派遣事業)などは、サービス業に分類され、
求人メディア、HRTech事業などは、広告業、情報サービス業、インターネット附随サービス業、ソフトウェア業などの扱いとなり、一括りにして全容把握することが難しくなっております。
「提供の仕方は多種多様だが、企業と働く人のいずれか、または双方の間に入り、サービスを提供する」
それが、人材業界の事業領域となります。
人材業界は、上記のように複数の業界区分で分かれてしまっており、全容把握がしづらい業界なのですが、市場規模として大きく、統計が取れるものとして、
の3つの領域区分がございます。
また、上記に加え、4.HRTech をいくつかの企業・調査機関が市場規模を算出しております。
領域ごとに少しご説明をさせていただきます。
※尚、当社のカバー領域である、1.求人広告、2.人材紹介、4.HRTechについて、具体的にご説明させていただきます。
求人広告(求人メディア)の歴史、概要、ビジネスモデル
求人広告(紙からWEB(PCでの利用)を経て、スマホ(アプリ)へ)
かつては新聞紙上の広告(日曜求人欄)や新聞折込の求人広告、また求人情報誌(『とらば~ゆ』、『B-ing』、『an』など)が主流でしたが、1990年代後半から誕生したインターネット求人サイト(現在の『リクナビNEXT』や『エン転職』)が2000年代前半に台頭、急成長を遂げ、高速通信環境の整備(yahooBBによるADSLの普及など)、また日本国内のインターネットポータルサイトで圧倒的な地位を築き上げていたyahoo上にある【yahoo求人】と転職サイトとの提携によるアクセス急増などを経て、紙からWEBへと求人広告は移行されていきました。
その後はご存知のようにスマートフォンを利用して求人情報にアクセスできるようになり、PCサイト中心から、携帯、スマホ中心に、そして、アプリ版も用意され、ユーザーが便利に求人情報にアクセスし、応募出来るように設計、デザインされております。
「求人情報」、「求人サイト」で想起されるサービスは、学生時代の就職活動で利用した「リクナビ」、また「マイナビ」などのサービスを思い浮かべるのではないでしょうか?
自分の意思で企業情報、説明会情報にアクセスし、会社説明会に参加、またエントリーシートを提出し、選考に臨む。
現在ではごく当たり前のこのような(就職)活動ですが、以前は、学生がたくさんの企業情報、求人情報にアクセスすることは叶いませんでした。
では、どのように就職先(企業)を探していたのか、と言いますと、
・学校推薦(学内選抜・指定校制度)※大学の就職部・研究室に対して、企業は募集を出していた。
・縁故採用
の2つを利用して就職先を探す方法が一般的でした。
1960年代に大学紛争で学内推薦機能が麻痺し、自由応募制度である、学生自らが就職先を探すスタイルに変わっていきました。
そんな時代背景の中、生まれたのが、リクルート社が1962年に創刊した情報誌『企業への招待』です。
「「就職先は自分の意志で選ぶ」という価値観を提案した、日本で初めての求人情報メディアとなり、あらゆる情報誌事業の原型が誕生した瞬間でもありました。」(リクルート社HPより引用)
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自社のサービスを通して、【多くの方に(求人)情報をお届けする】
これが、求職者様1人1人にあった求人情報をお届けする人材紹介サービスなどとの違いとなります。
先にご紹介しました歴史背景(求人情報が閉ざされていた)を理解すると、より意義や価値を感じて頂けるのではないでしょうか?
昨今では、『ハイクラス層の転職活動』において閉ざされた状態を「ダイレクト・リクルーティング」という手法を採用企業様に提唱することで、ハイクラス転職市場をOPENに、そして活性化させた『ビズリーチ』は、求人広告の世界で新たな風穴を開けた、と言えると思います。
なお、新聞や雑誌の求人広告掲載は、掲載する場所(ページ)や広告枠の大きさにより料金が決まっており、その流れも受けてか、2000年前後に台頭した求人メディアの広告掲載料は、求人掲載のボリューム(画像点数や記事構成)、取材有無、検索結果での順位付け等で価格差が発生する転職サイトが多く、4週間掲載でXX万円などのような【前課金型のビジネスモデル】が主流でした。
昨今は、クリック課金型(1クリックXXX円)、応募課金型(1応募X万円)、掲載料+成功報酬型(6ヶ月の掲載料金XX万円に加え、採用時に1人あたりXX万円)、完全成功報酬型(1名採用決定毎にXX万円などのような)モデルも出てきており、料金形態は多様化しております。
- リクルート
- マイナビ
- エン・ジャパン
- ビズリーチ
- ディップ
- アイデムなど
- 中途採用(「リクナビNEXT」、「マイナビ転職」、「エン転職」、「doda」、「ビズリーチ」、「type」など)
- 新卒採用(「マイナビ」、「リクナビ」、「キャリタス就活」など)
- アルバイト採用(「バイトル」、「タウンワーク」、「マイナビバイト」など)
人材紹介業界の概要、ビジネスモデル
人材紹介は、職業紹介(を行う)事業者のことを言い、名称がいくつか存在します。
一般的に用いられる「人材紹介会社」以外にも、昨今よく耳にする「転職エージェント」、その他「人材バンク」、「ヘッドハンティング会社(エグゼクティブサーチファーム)」などと呼ばれるものが該当します。厚生労働大臣の許認可を受けた、人材紹介会社/職業紹介事業者が、求人企業(採用をする企業)と求職者(転職を考えている個人)の間に立ち、斡旋、仲介を行います。
人材紹介会社が提供する個人のお客様に対するサービスとしては、求人案件の紹介、提案だけではく、業界・個別企業の情報・動向提供や求職者のこれまでの経験や希望を踏まえた上でのキャリアコンサルティング、履歴書、職務経歴書など応募(時提出)書類の添削、ブラッシュアップ、面接日程の調整や面接選考対策、内定時の報酬(年収)、入社日などの交渉、退職交渉、退職手続きの助言など多岐にわたります。
これらのサービスをすべて無料で個人のお客様(求職者様)はご利用いただけます。
人材紹介会社が提供する法人のお客様に対するサービスとしては、人材紹介の依頼を受けた求人、ポジションに対して、人材をご紹介し、採用・入社に至るまでのサポートを行うものとなります。
担当者が行う業務としましては、企業経営者、役員陣、(自分のチーム、組織で採用を考えている)部門責任者、人事担当者と商談、打ち合わせを行い、企業の経営課題、事業課題、人事・採用・組織課題のヒアリングを通じて、求めている人材要件の摺り合わせや採用、育成についてのソリューションを提供します。人材紹介業は成功報酬型のビジネスモデル故に、商談機会の創出と人材紹介契約の締結に対するハードルは(前課金型の求人広告の法人営業職などと比べると)決して高くないのですが、商談を経て、採用支援、採用成功に至るまでが難しく、法人担当RA(リクルーティングアドバイザー)の力量が問われます。
下記、リンク先で、更に詳しく人材紹介業界について説明、解説をしております。
HRTechの概要、ビジネスモデル
“HR(Human Resource)× Technology”を意味する造語になります。
クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など最先端のIT関連技術を使って、採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行う手法のことをHRTechと言います。
HRTechのサービスは多岐に渡っており、毎年新しいサービスが生まれているため、アップデートが欠かせませんが、把握している限りでの、各社が提供しているサービス、サービス名称を採用、採用管理、人事管理、労務管理、人材育成など領域別で記載いたします。
【1】採用(ダイレクト・リクルーティング、採用広報、リファラル採用)
- ビズリーチ
- リクナビHRTech転職スカウト
- indeed
- Wantedly
- PRTable
- MyRefer
- Refcome
【2】採用管理システム(ATS)
- HRMOS採用
- リクナビHRTech採用管理
- JobSuite
- アクセスオンライン / アクセスオンラインキャリア
- EHR採用
- ジョブカン採用管理
- HITO-Linkリクルーティング
- Talentio Hire
- HERP Hire
- 採用一括かんりくん
【3】人事管理クラウド(HCM(Human Capital Management)システム、タレントマネジメント、エンゲージメント)
- タレントパレット
- カオナビ
- CYDAS(サイダス)
- HRBrain
- HRMOSタレントマネジメント
- あしたのクラウドHR
- モチベーションクラウド
- wevox
- Unipos
- Geppo
- COMPANY
- SAP SuccessFactors
- Workday
【4】労務管理クラウド
- ジョブカン労務管理
- freee人事労務
- マネーフォワードクラウド人事管理
- ジンジャー人事労務
- SmartHR
- 楽楽労務
- HRMOS勤怠
- KING OF TIME
【5】人材育成・社内ナレッジ共有クラウド
- グロービス学び放題
- Udemy
- Schoo
- Teachme Biz
- ClipLine
- NotePM
- Dojo
買い切り型で提供されることが多かったソフトウェア製品がクラウド上で提供されることとなり、toC向けビジネスでも用語として用いられることが多くなりましたが、サブスク、サブスクリプションモデルと呼ばれる継続課金型のビジネスモデルへのシフトがなされました。上述の掲載サービスも大半がSaaS(Software as a Service)で展開されております。
契約時の初期導入費用がかかるものがございますが、その後は、月額定額制で利用するサービスが一般的となっております。尚、企業・プロダクトによっては、トライアル利用を促すために、また営業コストを削減するために、7日間無料、1ヶ月無料、1アカウントは無料などのテスト導入を促し、試行後、本契約に移行してもらうという手法を取っている先も多くございます。
人材ビジネス、人材業界、HRTechの市場規模
尚、各領域の市場規模は、
- 求人広告:4,150億円(※2020年度、公益社団法人全国求人情報協会調べ)
- 人材紹介:5,240億円(※令和2年度、厚生労働省、職業紹介事業報告書の集計結果より)
- 人材派遣:8兆6,209億円(※令和2年度、厚生労働省、労働者派遣事業報告書の集計結果より)
となっております。
尚、1の求人広告(求人情報サービス)で、公益社団法人全国求人情報協会が調査結果のリリース文章にて「なお、ソーシャルリクルーティングやアグリゲーター、クラウドソーシングといった新形態サービスの市場規模は、この数字には含まれておりませんが1,886 億円となっており、前年度+69.1%となっています。」と記載されているよう、新形態のサービスは上記に市場規模に含まれておらず、HR関連の新しいサービス、HRTech領域の事業会社の売上等は、市場全体では正確に把握できていない状況です。
デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社が毎年プレスリリースを出している、「HRTechクラウド市場の実態と展望」によりますと、HRTechクラウド市場の市場規模は、下記のように推移しているそうです。
- 2018年度 256.4億円
- 2019年度 349.0億円
- 2020年度 426.0億円
- 2021年度 578.0億円
求人広告や人材紹介の市場規模比ではまだ劣るものの、成長率が非常に高いのが特徴で、ミック経済研究所は、2026年度には2,270億円の市場規模になると予測、とリリースされておりました。
HRTech企業の売上高推移の例(プラスアルファ・コンサルティング社)
HRTech企業の売上高推移の推移の例として、上場をしている企業の売上高は正確に数字が取れますので、参考までに、「タレントパレット」を運営する、プラスアルファ・コンサルティング社の売上高推移を記載いたします。尚、同社は他事業も展開しておりますので、100%HRTechとしての数字ではないですが、同社の事業の柱として成長をしているため、参考になると思い、記載いたします。
- 2018年9月期実績 25億3,500万円
- 2019年9月期実績 34億4,800万円
- 2020年9月期実績 47億2,600万円(営業利益14億3,000万円)
- 2021年9月期実績 61億1,800万円(営業利益21億600万円)
- 2022年9月期実績 79億1,000万円(営業利益26億6,300万円)
HRTech企業の売上高推移の例(indeed社)
TVCMでもお馴染み、そして、グローバルで展開し、成長を遂げているindeed社の売上高も100%正確ではないものの、下記のような情報が取れました。
- 2014年 約400億円(※ダイヤモンド・オンラインの記事より)
- 2018年 約2,170億円(※Business Insider Japanの記事より)
- 2019年 約3,000億円(※ダイヤモンド・オンラインの記事より。尚、日本法人の売上高は245億円)
ご覧のように爆発的な成長を見せており、1.求人広告の市場規模は、前年度比-45.9%(7,669億円から4,150億円)となっているのですが、それが求人広告の市場そのものが衰退しているというより、ビジネスモデルの変化、変容、サービス、プロダクトの進化、多様化が起きていることを示しているかと思います。
また、ご承知のように、コロナ禍に於いて、経営環境、事業環境変化に伴う、採用の縮小・停止、逆に、DX化を推し進めるためのIT・デジタル関連人材の獲得強化の波、また、テレワーク・在宅勤務導入、人事制度改定、人的資本に関する情報開示の検討、などにより、HRを取り巻く環境、状況は大変大きな変革期にあります。
具体的には、採用現場では、ZoomやTeams、Google meetなどを活用した「Web面接・オンライン面接」の導入が加速し、新卒採用でも、中途採用でも当たり前に運用されております。また、人材育成領域の現場では、「グロービス学び放題」などのオンライン学習ツールの導入やZoom等を活用したオンライン研修手法を取り入れたり、そうしたものをデジタル上で管理するLMS(学習管理システム)の導入がなされ、また、テレワーク勤務に伴い、通信環境補助(一時金の支給や在宅勤務手当を支給)や三井不動産が運営する「ワークスタイリング」などのサテライトオフィスの導入・活用、また、フレックスタイム制度のコアタイムを短縮、廃止したり、労働時間の幅を柔軟に持たせるなどの人事制度改定を進める動きがあるなど、業界問わず、近年例にない規模とスピードで大変革が起こっています。
雇用情勢の悪化を受けて、苦境に立たされている企業が多くあるのも事実ですが、一方で、今まで当たり前のものとして踏襲していたことを見直す、変える契機となっているこの機会をチャンスと捉え、攻めに出る企業も数多くあります。
上記記載の3領域内の企業群がそうしたサービス展開を進めているのはもちろんですが、同時に、ベンチャー企業、スタートアップ企業によるHR関連の立ち上げも活発化しており、採用・育成・人的資産管理・その他HR関連のサービス全てで、変化が起きております。
- 新卒採用(非対面での面接選考、企業理解のためのWEB・動画活用、イベントもオンライン・リアルのハイブリット)
- 中途採用(即戦力採用、DX人材採用、柔軟な働き方が叶う求人の増加(テレワーク可、副業可、フルフレックス制など))
- 選考ツールの多様化(オンライン面接、録画面接、PR動画選考)
- 人事制度(労働時間の柔軟性、手当の変化、福利厚生の変化、副業解禁、ジョブ型人事制度導入)
- 各種HRTechサービスの導入(採用、採用管理、適性検査、育成、LMS、マネジメントツール、タレントマネジメント、人事評価、配置、労務、エンゲージメント、健康管理、健康経営など)
これらの利用・普及・改定に伴う新たな需要創出で、HR業界、人材業界全体としてコロナ禍での成長を果たし、様々な業界・企業・働く個人へ対して、更なるサービス、付加価値を提供しております。