こちらのページでは、M&A業界の経営者、M&A事業の責任者、人事採用担当者の皆さまの参考になればと、M&A業界の中途採用手法や人材要件、選考方法などについてまとめております。
尚、採用側目線での記事になってはおりますが、M&A業界へ転職を希望される方にも参考になりましたら幸いです。
【1】M&A業界(M&A仲介会社等)のキャリア採用・中途採用手法
- 転職エージェントの活用
- 求人媒体の活用
- リファラル採用の活用
【2】M&A業界(M&A仲介会社等)の人材要件
- 営業力重視
- 金融業界出身者
- M&A業界実務経験者(M&A仲介会社、金融機関、事業会社、コンサルティングファーム)
- 学歴、保有資格でのポテンシャル採用
【3】M&A業界(M&A仲介会社等)の選考
【4】M&A業界(M&A仲介会社等)の中途採用状況
- M&A仲介大手、上場企業各社様の採用動向(日本M&Aセンター様、M&Aキャピタルパートナーズ様、ストライク様、M&A総合研究所様、ブティックス様、名南M&A様、オンデック様)
1.M&A業界の中途採用・キャリア採用手法
主に3つの手法で中途採用を実施
M&A業界(M&A仲介会社等)の中途・キャリア採用は、主に3つの手法で行われております。
- 転職エージェントの活用
- 求人媒体の活用
- リファラル採用の活用
人材紹介会社、転職エージェントの活用
まず最初に挙げました、人材紹介会社、転職エージェントを活用しての中途採用。こちらを中心に据えている企業様が多い印象で、
「入社実績の約8割がエージェントさん経由です。」(某M&A仲介会社 人事担当者様)というお話も耳にいたします。
M&Aコンサルタント、M&Aアドバイザーの人材要件がM&A業界の市場規模拡大により若干緩和傾向にあるものの、依然として、銀行・証券などの金融業界出身者を採用する企業様が多いこともあり、採用ターゲットに沿った人材を厳選して紹介してもらえる人材紹介会社、転職エージェント各社の力を借りる傾向が強くあります。
■どういった人材紹介会社、転職エージェントと契約をしているか?
当社とお取り引きをさせていただいておりますM&A仲介会社様にお話を伺いますと、
複数社様をメインに当該企業との(人材紹介)契約を行い、
加えて、
- 大手人材紹介会社(の金融、コンサル、M&A等を担当する組織) 数社
- 金融業界(また会計系コンサル、会計士採用)などに強い転職エージェント 数社
などと関係強化し、毎年度の中途採用計画を成功させようとパートナーシップを組んでらっしゃいます。
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■フィー(人材紹介手数料)について:
昨今の採用熱の高まり、M&A仲介会社の新規設立、M&A仲介業の新規参入もあり、フィーが年々上昇しております。
一般的には、初年度理論年収の35%という提示が標準であり、同様の契約内容のM&A仲介会社も多くございますが、
- 期間限定で、フィー50%
- 前期実績で、成果をあげたエージェント様の場合、翌期は50%
- 業界経験者の場合、通常フィーに20%上乗せする、または一律500万円にする
など、優秀な人材(M&Aコンサルタント、M&Aアドバイザー)の採用成功が事業成長の重要なファクターであるため、各社フィーをあげる傾向にあります。
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■転職エージェント各社から推薦を得るために必要なこと:
(1)情報開示
・会社設立、事業立ち上げの背景
・代表者様、事業責任者様の経歴
・事業状況
・現場役職者やメンバーの情報
・会社、採用ホームページの強化
(2)他社との違いを明示
・事業の特色、特徴を分かりやすく伝える
・こういう人がフィットする、活躍しているという組織、人材の特徴
・当社で働く上でのメリット、デメリット
(3)エージェントへの対応力
・質問への回答スピード
・選考の日程調整のスピード
・面接のフィードバック
(※丁寧なフィードバックを頂くと、推薦意欲は落ちませんし、次回以降のマッチング精度向上に繋がります。)
・業者扱いしない
(※採用成功に向けた重要なパートナーだという気持ちでコミュニケーションをされると担当するエージェントのコンサルタントも人間ですので、応援したい、支援したいという気持ちが増し、結果、強固なパートナーシップが築かれる企業様が1社1社増えていくかと思います。)
※尚、契約内容のフィーが極端に同業他社と比べて低い場合、どうしても推薦意欲が下がる傾向はございます。
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求人媒体の活用
2番目の求人媒体の活用ですが、求人掲載をするのはもちろんのこと、候補人材にスカウトメールでお声がけをする、(ビズリーチなどの)ダイレクトリクルーティングの活用も行っている様子が伺えます。
尚、当社でも、面談をしたM&A業界への転職志望者様から、企業様から直接転職サイトでもメッセージ、スカウトが届きました、というお話を伺います。
■求人媒体活用のメリット、デメリット:
メリットは、
- 推薦を待つ、という受け身ではなく、主体的、能動的に自ら声掛けができること
- 採用費用が抑えられる可能性があること
デメリットは、
- 前課金型の転職サイトの場合、採用が1人も出来なくても費用が発生すること
- 声掛け(スカウト検索、文面作成、送信)、(カジュアル)面談調整、選考過程での状況把握と意向上げなど、採用業務の工数(人的負担)が転職エージェント利用時以上に多くかかること
などが挙げられます。
尚、人事が1人、若しくは採用業務以外の人事業務も兼務されているというような企業様の場合は、求人掲載はあまりおすすめいたしません。二兎追う者は一兎も得ず、ではありませんが、転職エージェント各社様とのコミュニケーションと役員、現場責任者クラスとのコミュニケーションに時間と工数を費やしたほうが精度高い推薦と採用成功に繋がると思います。
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リファラル採用の活用
3番目のリファラル採用の活用ですが、こちらは、積極的かそうではないかで差はございますが、多くの企業様で実施されております。
特に、メガバンク出身者、大手証券会社出身者は新卒同期の人数が多いこともあり、前職の同期、同僚を誘う動きは、大手から中小ブティックまで数多く見受けられます。
コロナ以前は、前職の同僚をランチや飲みに誘って、「ウチに来ないか?」、「ウチの会社の話を聞いてみないか?」、というアプローチをされていた印象ですが、コロナ禍でそうした形でのアプローチが現実的に難しくなったこと、現場コンサルタントも目の前のお客様の対応で非常に多忙であることも相まって、コロナ前との比較では、リファラル採用活動の促進は、トーンダウンしている印象がございます。
尚、コロナ禍で実施している企業様は、オンラインを積極活用しており、人事や部長、役員とのカジュアル面談をオンラインで実施したり、オンライン会社説明会、オンラインセミナーへ、元同僚の方をお誘いする方法などを取っております。
■リファラルの流れ:
(1)意欲がある場合は、直接面談設定(カジュアル面談 or 事実上の1次面接)
(2)意欲がそこまでない場合、採用セミナーへの誘導(月1ペースなどで実施しているものを案内する)
■インセンティブについて:
・特段設けていない
・賞与に反映する
・明確に1名XXX万円支給する(入社後3ヶ月、6ヶ月経過時点で支払い等)
■メリット、デメリット:
メリットは、(友人知人、元同僚などの)現役社員に話を聞き、理解がある上で選考に臨んでいる。ある程度能力・スキルの情報が分かる。入社後のミスマッチが防ぎやすい。
デメリットは、エージェントが間に入るわけではないため、他社選考情報等は把握しきれないことがある
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次に、M&A業界、M&A仲介会社各社の中途採用のターゲット、人材要件について、記載いたします。
2.M&A業界の人材要件
主流は営業力重視か金融経験・金融知識重視の2つ
M&A業界、特にM&A仲介会社は、実務経験者がまだまだ少ないこともあり、基本的にはM&A実務未経験を多く中途採用します。そのため、M&Aの実務経験が不問ではあるのですが、一方で、営業力、金融業界での経験については求められるケースが多くなっております。
パターンとしましては、
(1)営業力重視型
(2)金融業界経験重視型
のいずれか2点が多く、
ブティック型のM&Aアドバイザリーでは、少数精鋭故、
(3)M&A実務経験者の採用を主体としており、次いで、先に挙げた(2)金融業界出身者の2パターンが多いですが、
(4)特定業界への知見、経験値の有無
(5)有資格者、学歴重視型
で、中途採用をされているケースも一部ございます。
それぞれ下記に補足をいたします。
(1)営業力重視型の場合
- TOP(クラス)の成果、成績を直近在籍企業で挙げていること
- 瞬間的な成果・実績ではなく、継続的に高い成果を残していること
- 経営者、経営陣、部門責任者などとの折衝が発生する営業職に従事していること
- 意思決定が容易ではない高額商品や複雑性の高いソリューション営業を経験していること
(2)金融業界経験重視型の場合
- メガバンク、地銀での法人営業(RM)経験者
- 一定レベルの金融知識が備わっている方(財務諸表が読める、オーナー経営者様に対して財務面での提案、アドバイスができるレベル)
(3)M&A実務経験者の場合
- M&A仲介会社、M&Aブティックで、主担当者として成約実績を持つ方(経験期間、成約件数、規模感、担当業界なども確認)
- 銀行・証券のM&A専任部署でソーシング~エグゼキューション業務に携わっていた方
- 事業会社のM&A担当者として、案件のソーシングを自社で行い、クロージングまで自ら手掛けた経験のある方
(4)特定業界への知見、経験値の有無
- 製造業での営業経験を持ち、製造業のM&Aに従事する上での基礎知識や理解がある
- ソフトウェア業界での営業経験を持ち、ソフトウェア業界のM&Aに従事する上での基礎知識や理解がある
- 医療業界での営業経験を持ち、医療業界のM&Aに従事する上での基礎知識や理解がある
(5)有資格者、学歴重視型
- 公認会計士資格を保有する方(例:監査法人在籍中の若手層など)
- 東京大学、京都大学、一橋大学卒などの第二新卒層
3.選考(書類・面接・適性検査)
書類選考で厳密な基準を設け、面接選考で活躍可能性とフィット感を確かめる
まず、書類選考についてですが、
- 誤字脱字がないか
- 文章の書き方(分かりやすく説明できる方か否か、また書き方から人間性も感じ取る)
- 営業成績等、現職での業務内容と成果についての確認
- 記載があれば、退職理由と志望理由の確認
を確認し、合否判断を下します。
次に、面接選考ですが、
- 1次 人事 or 現場管理職級
- 2次 事業責任者
- 3次 役員
が一般的ではございますが、2次が社長様、最終が現場責任者様という企業様もございます。実施回数は、2回、若しくは3回が多くなっております。
M&A業界の面接選考の特色としましては、
- 配属先を決めるために、管理職級が複数名で対応するケースがある(※合否判断を複数名で行う目的とともに、どの部長との相性が良いかを確かめる)
- 会食の場を設ける企業様がある
が挙げられるかと思います。
【質問1】選考は対面、非対面どちらが多いか?
1次、2次など序盤の選考フェーズは、オンライン面接を活用している企業様が多いです。ただし全てオンラインの企業様は少なく、最終選考は、対面実施が多くなっております。
※2023年9月時点の話ではございますが、2次面接以降になりますと、対面実施主体に戻す動きが出ている印象はございます。
※2024年1月時点では、1次から(候補者様が望む場合は)対面実施するケースも増えてきました。
【質問2】リファレンスチェックを実施している企業はあるか?
M&A仲介会社では、ほとんど実施されていない様子ですが、M&A業界経験者採用の場合、実施している企業様はございます。
【質問3】適性検査実施の有無は?
実施していない企業の方が当社の印象では多く、書類と面接選考で判断されている企業様が多いです。リクルートマネジメントソリューションズ社の「SPI3」や日本エス・エイチ・エル社の「GAB」を利用されている企業様はございますが、合否判定において重視をしている印象はあまりございません。
4.中途採用状況
コロナ禍においても各社積極採用をされておりますが、応募者も数多く集まっていることもあり、結果的に、厳選採用になっております。
未上場企業の場合、事細かな数字は把握が難しく、且つ開示が難しいですが、M&A仲介会社上場企業各社様は、IR上でコンサルタント数を開示しておりますので、下記に記載させていただきます。
【参考】M&A仲介大手企業、上場企業各社様のコンサルタント数 推移
日本M&Aセンター様
2017/03 217名
2018/03 264名(+47名)
2019/03 328名(+64名)
2020/03 390名(+62名)
2021/03 473名(+83名)
2022/03 568名(+95名)
2023/03 622名(+54名)
M&Aキャピタルパートナーズ様
2017/09 51名
2018/09 64名(+13名)
2019/09 80名(+16名)
2020/09 100名(+20名)
2021/09 123名(+23名)
2022/09 124名(+1名)
2023/09 155名(+31名)
※子会社であるレコフ社の数字
2017/09 33名
2018/09 44名(+11名)
2019/09 46名(+ 2名)
2020/09 51名(+ 5名)
2021/09 45名(- 6名)
2022/09 38名(- 7名)
2023/09 35名(- 3名)
ストライク様
2017/08 39名
2018/08 47名(+ 8名)
2019/08 84名(+37名)
2020/08 93名(+ 9名)
2021/08 136名(+ 33名)
2022/08 150名(+ 14名)
2023/08 189名(+ 39名)
M&A総合研究所様
2020/09 14名
2021/09 38名(+ 24名)
2022/09 89名(+ 51名)
2023/09 220名(+ 131名)
ブティックス様
2020/03 10名
2021/03 18名(+ 8名)
2022/03 27名(+ 9名)
2023/03 39名(+ 12名)
2024/03 50名(+ 11名)※23年8月時点
名南M&A様
2016/09 13名
2017/09 15名(+ 2名)
2018/09 20名(+ 5名)
2019/09 20名(+- 0名)
2020/09 29名(+ 9名)
2021/09 31名(+ 2名)
2022/09 41名(+ 10名)
オンデック様
2016/11 6名
2017/11 9名(+ 3名)
2018/11 13名(+ 4名)
2019/11 21名(+ 8名)
2020/11 28名(+ 7名)
2021/11 28名(+- 0名)
2022/11 36名(+ 8名)